【受講生インタビュー】起業家精神を持つ人材が農業の発展には欠かせない/高橋大就さん

日本の農業を成長産業にしたい



外務省に約9年務め、その後外資系コンサルティング会社に勤務、マネージャーとして農業関連プロジェクトを手掛ける高橋大就さんにお話を伺いました。現在は大手食品インターネット販売会社の海外事業部長として、海外のお客様に日本の野菜・果物、食材などを届ける事業を展開中。また、震災を機に「一般社団法人 東の食の会」を立ち上げ事務局代表に就任。東日本の食産業の復興を支援しています。

Q1 なぜ農業に興味をもったのですか?

もともと、日本の農村風景、原風景を守りたいという思いが強かったのですが、農業に仕事として携わりたいと思うようになったのは、外務省で日米の通商交渉を担当してからです。日本と世界との通商交渉は必ず農業問題で行き詰ってしまいます。日本の農業を単に関税で保護しようとするのではなく、産業として強化し、雇用を生み出し、世界にも打って出ていけるような成長産業にしたいと思うようになりました。
それが、本当の意味で農業を守ることにつながるし、日本の産業全体の国際競争力の強化にもつながると考えています。

Q2 農業ビジネススクールの魅力はなんですか?

農業生産の実践者、農産品流通の起業家、農業経営支援の専門家、国際貿易の専門家等、各々の分野での第一線の講師陣が揃えられ、農業ビジネスを様々な角度からバランスよく学べます。また、産地訪問、実技研修もあり、なかなか一人ではやりたくてもできない貴重な体験を得られます。
また、同じ関心、問題意識を持った仲間が集まるので、受講期間中だけではなく、受講後もつきあえる、様々な形で農業ビジネスに携わる仲間のネットワークができます。私が受講した期の仲間では、既に5名が農業ビジネスで起業をしており、私自身も農産品を扱う仕事をするようになりました。そのような仲間が周りにいるのは、相談相手という意味でも、モチベーションを維持する上でも、とてもありがたいものです。

講師陣に客観的にビジネスチャンスを評価してもらえる



Q3 農産物輸出に関しての事業計画を出されましたが、現在の仕事にはどのように活かされていますか?

事業計画に書いた具体的な案自体は実行に移せていませんが、香港への農産品輸出という意味では、まさに今、それが自分の仕事になっており、農業ビジネススクールでの事業計画作成がきっかけになっているとも言えます。
農業ビジネススクールの事業計画作りは、単なるアイディアだけではなく、実現可能性、収益性をしっかりと検討し、P/L、B/Sをきちんと作成します。自分が実際にそのビジネスを手掛けるというつもりで作成することで、漠然と持っていたアイディアが一気に具体性、真実味を増し、また、その難しさを実感することができます。それを専門家の方々に見ていただき、客観的にビジネスチャンスを評価してもらえるのは、背中を押していただく意味でも、無謀なチャレンジを戒める意味でもすばらしい仕組みだと思います。

Q4 輸出を行う中で、国内での販売と違う点、または難しい点はありますか?

顧客の食文化も購買行動も違えば、規制も商慣習も異なります。マーケティング、販売、物流、品質管理、カスタマーサービス、あらゆる面で難しいことが多いです。
しかし、日本の農産品に対するニーズは確実にあります。日本の輸出はまだまだ非常に少ないですが、市場毎に顧客のニーズをしっかりと分析し、それに応える商品・サービスを提供していくということを愚直にやっていくしかないでしょう。その上で、いかに品質を保持しながらコストを下げる物流を構築するかという点がもう一つの鍵になると思います。

Q5 率直に海外に農産物を輸出しての手ごたえはどうですか?

日本の美味しい野菜や果物に対する評価は高いです。実際に食べ比べてみればレベルが違うのを実感します。今後、多くのアジア市場が成熟していけば、この評価も広がり、嗜好も高まっていくに違いないでしょう。 一方で、日本から輸出した農産品は、まだまだ多くの消費者にとっては手が届かないのも事実。
きちんと価値を伝えながらも、いかにコスト競争力のある形で商品を提供できるかという面で努力する必要があります。 自分もまだまだビジネスとしてベストの形を作りきれていませんが、なんとか香港でモデルを確立し、それ以外の国にも進出していきたいです。

起業家精神を持った人材の参入が農業の発展には欠かせない



Q6 今後日本の農業はどういった変化をとげると考えますか?

今後の世界の食の消費需要の推移を考えれば、人口減少と高齢化の進む日本市場だけにしがみつくのではなく、胃袋の数も大きさも増える海外、とりわけアジア市場を目指さなければならないのはあらためて言うまでもないでしょう。
オランダやイスラエルのように、必ずしも広大な国土を持たなくとも戦略的に農業輸出を進め、農業輸出大国として成功している例もあります。日本も農産品の中で戦略商品を定め、戦略をもって海外におけるマーケティングを進めていく必要があると思います。
そのためには、現在は輸出のための販促活動は主に県単位で行われていますが、むしろ、産品毎に県を越えて横のつながりを深め、アメリカのポテトやニュージーランドのキウイフルーツのように、産品業界として海外販促を進めていく必要があると思います。

Q7 現在事務局長を務めている『東の食の会』はどういった活動をしているでしょうか?

東日本は素晴らしい食文化を生み、豊かな食を提供してきましたが、3.11により、食産業全体が危機に見舞われました。東日本の食産業の復興のために、「東の食」の安全・安心を担保した上で、流通を促進させるための仕組みとして、業界を挙げたプラットフォームを作りました。具体的には、東の生産者・加工業者の商品をデータベース化し、首都圏を中心とする食の流通企業に紹介して、マッチングを行うとともに、マーケティング、ブランディングの支援をしています。
また、流通の前提となる消費者の安心を高めるために、自主的な放射能検査の普及のための活動を行っています。
また、直近では、メディアの「復興支援」に対する関心も薄れつつあるため、東北にメディアの関心を集めるために、東北6県のご当地食材で「巻いた」名産品を有名シェフのプロデュースで生み出すという「東北6県ROLL(ロッケンロール)」というプロジェクトを立ち上げました。

Q8 農業ビジネススクールの受講を考えている方に応援メッセージを!

農業が伝統的な形の家族経営から、企業型の経営に移行していくのは、不可逆的な流れだと思いますが、まだまだ規模もスピードも足りません。もちろん、規制の問題もあるとは思いますが、何よりも起業家精神を持った人材の参入が産業の発展には欠かせないと思います。そのような人材がどんどん参入することが、規制をも超えてまたは変えていくことになると信じています。
一方で、昨今の「農業ブーム」で経営的な見通しのないまま参入し、苦労されている方も現れていると聞きます。しっかりと事業計画を作成し、それを客観的にプロの方に見てもらうということが必要だと思います。
農業ビジネスに少し関心を持っているという方にも、真剣に起業や参入を検討している、という方にも農業ビジネススクールをお勧めします。私自身や私の期の多くの仲間にとってそうであったように、人生を変えるようなきっかけや気づきに、また、同じ問題意識を共有し議論する仲間に、出会えるかもしれません。

※受講生の声は、農業ビジネススクール受講生の方にご協力いただきました。
この場をお借りして、深く御礼申し上げます。
※受講生のプロフィールは取材当時のものです。

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